ロードバイクは楽に、遠くまで行けるという特性上、ロングライドで数時間、自転車を漕ぎ続けることも珍しくありません。
日常生活では取らない姿勢になり、普段は感じない疲れも出てきます。
そんな中、腰痛に悩まされるサイクリストも少なくないはず。
2,3時間以上のロングライドだと、後半から腰が痛くなる・・・
周りのみんなは大丈夫なのに、なぜ自分だけ腰痛になるの?
大好きなロードバイクを、体の不調で楽しめないのは嫌だ!
本記事では腰痛に悩まされるサイクリストに向けて、その原因と取るべき対処法をお伝えします。
本記事では以下の悩みが解決できます。
- ロードバイクで腰痛が起こる原因が知りたい
- 腰痛にならないような体作り、使い方が知りたい
筆者は理学療法士という体の機能を知り尽くした専門家です。
整形外科クリニックに6年勤めており、理学療法士の中でも腰痛に対しての知識は豊富であると自負しています。
私自身、腰痛を克服したサイクリストですので、実体験にともづいた解決策をお伝えします。
原因を知り、しっかりと体を鍛えて腰痛を改善したいサイクリストの助けになるはずですので、ぜひご覧になってください。
そもそも腰痛はなぜ起こるのか??

まずはロードバイクに乗る姿勢が腰痛につながる原因について解説します。
腰の筋肉を使いすぎている
自転車はペダルを踏むと進む乗り物です。
脚の力がペダルにうまく伝わると速く、楽に前に進めます。
しかし、「うまくペダルに力を伝える」のは意外に難しく、全てのサイクリストが課題にあげるところですよね。
なかでも腰痛を起こすサイクリストは、脚の力がうまく使えない分、違うところからパワーを借りてこようとします。
そのときに、腰の筋肉を働かせすぎて、腰痛を起こす原因となるのです。
腰が曲がりすぎている
ロードバイクはサドルよりハンドルが低い位置にあります。
したがって、大きな前傾姿勢を取らなければなりません。
前傾姿勢になるとき、大きく曲がる関節は以下のものがあります。
- 股関節
- 背骨(胸椎と腰椎)
この中で、腰痛を引き起こしやすいサイクリストは、背骨の中でも腰椎を大きく前かがみにします。
使いすぎ・曲げすぎで腰痛になる理由

腰痛持ちサイクリストは腰の筋肉を使いすぎる。
ペダリングの際に腰を曲げすぎているというのがわかりました。
では筋肉の使いすぎ、腰の曲げすぎが腰痛につながる流れを、さらに深堀りしましょう。
筋肉への血流が不足する
筋肉の中には毛細血管が張り巡らされています。
この毛細血管によって、筋肉を動かすための栄養や酸素を送っています。
筋肉を使い続けるということは、筋肉が固くなろうと収縮し続けている状態です。
(例えるならば、水道から伸ばしたホースをギュッと握り続けている状態。筋肉に対して血流が送れない時間が続きます。)
栄養と酸素が不足した筋肉はピンチだと感じ、炎症を起こす物質であるサイトカインが発生します。
つまり、使い続けた筋肉は血流不足になり、軽い炎症を起こして痛みを感じるようになるのです。
伸ばされた筋肉は負担が大きい
筋肉はゴムのように、大きく伸び縮みする事ができます。
長さが大きく変わる中で、筋肉にとって働きやすくて、負担が少ない適切な長さが存在します。
一方、筋肉にとって最も負担がかかる状態は、伸ばされた状態です。
例を上げると「肉離れ」
プロスポーツ選手でも起こしやすい怪我の1つですが、筋肉が伸ばされた状態で強く筋力を発揮すると起こってしまいます。
腰を丸めた姿勢で自転車を漕ぐサイクリストは、常に腰の筋肉を伸ばした状態です。
前かがみになった体が倒れないよう、腰の筋肉は働きます。
したがって、腰の筋肉は引き伸ばされ、常に使い続けられているので、負担が大きくなります。
椎間板への負担が大きい
椎間板は全ての背骨の間の少し前方で、クッション材のような役割を果たします。
背骨が前かがみになると、前方にある椎間板が潰される形になります。
これが強く、頻繁に繰り返されると「ヘルニア」を発症してしまいます。
椎間板への負担は
- 立っている
- 座っている
- 座って前かがみ
順で椎間板への負担は増えるので、サドルに座って前かがみになる姿勢は、椎間板への負担が非常に大きいです。
ロードバイクの腰痛を治すためにするべきこと

腰が丸くなっていて、腰の筋肉を使いすぎている状態が、腰痛につながる原因だと解説してきました。
以下では、腰痛を改善するため、するべきことを伝えて行きます。
股関節を柔かくする
前傾姿勢になるときに、腰骨を大きく前かがみにしてしまうのは、腰にとって悪影響です。
そこで、股関節を柔らかくして、大きく曲げれるようになリましょう。
股関節がしっかり曲がることで、腰の前傾を抑えることができます。
「股関節を意識したペダリング」とはよく言われます。
しかし、股関節を使おうにも、そもそも曲げられる柔軟性が足りてなければ、代わりの部位を使おうとするのが人間の体です。
したがって、股関節をしっかりと柔らかくするために日頃からストレッチを行い、ペダリングをしやすい体を作りましょう。
体幹筋・お尻周りを鍛える
腰の筋肉を使いすぎるのにも、いくつか原因はあります。
なかでも多いのは、腹筋とお尻周りの筋肉がうまく使えないために、腰の筋肉を使ってしまうパターンです。
そもそも使い方が分からない、筋力が不足していることが多い部位ですので、使えるように練習していきましょう。
腹筋の重要性
腹筋には前かがみになる体を、止める力があります。
腰の筋肉は後ろから体を引っ張り上げるのに対して、腹筋は前方に支柱を作って支えてくれるようなイメージです。
大殿筋・ハムストリングスの重要性
股関節を伸ばす力が強い2つの筋肉に、大殿筋とハムストリングスがあります。
股関節を伸ばす力は、ペダルを上死点から下に踏み込むときに大きく使います。
これらがうまく使えないと、代わりに腰の筋肉を強く収縮させるので、しっかり使えるようにしましょう。
腰痛対策のストレッチとトレーニングの方法

腰痛対策のセルフケアで行うべきストレッチとトレーニングをお伝えします。
股関節のストレッチ
ストレッチはいくつもありますが、おすすめなのは脚を前後に大きく開く方法。
腰を前かがみにせず、脚のストレッチだけが出来るので、腰への負担が少ないです。
- 脚を前後に大きく開く
- 前脚の太もも裏が突っ張るのを感じる
※後ろ足の付け根が突っ張ることもある。その時は前脚の膝を伸ばすようにしてください
下半身のトレーニング
そもそも、お尻の筋肉に力が入るか確認しましょう。
うつ伏せで寝るか、立っているときにお尻を固くできますか?
これが難しい場合は、1から順番に出来るようにステップアップしてみてください
うつ伏せになり、お尻をギュッと固くしてみてください。
できているかは実際に手で触れて確認してみると良いです。
普段からお尻の力を使えていないヒトは力の入れ方がわからず、足先ばかりに力が入ってお尻はプニョプニョのままになっていると思います。
お尻を固くすることができたら、次のステップ。
うつ伏せになって、片脚を後ろに持ち上げてみてください。
このときも上げている側のお尻を触りながら、固くなっているのを確認すると、さらに効果的です。
いよいよ、立って体重を乗せた運動です。
意識するのは横から見たときに、膝が前に出しすぎずにお尻を引くようなイメージ。
数回繰り返しているうちに、お尻や太もも裏が疲れる感覚があれば正しくできています。
もし腰に疲れを感じる場合、お尻を下げすぎず、やや高い位置までのスクワットにしてください。
最も難しいレベルの片足スクワット。
ステップ③のように膝が前に出すぎないように、お尻を後ろに引くイメージが大切です。
注意点として、前方や上から見て膝が内側に入りすぎないようにしましょう。
このときも数回行ってお尻に疲労感があれば、正しくできています。
プランク
よく体幹筋の強化として、目にする運動かと思います。
肘と足先で体を支えて、真っ直ぐが保持できるようになったら次のステップ。
片脚を曲げて体の斜め横まで持ち上げます。
このとき、体幹は真っ直ぐを保持するように意識してくださいね。
その他の対処法

腰痛に対して、体の柔軟性と筋力を上げることにより、対処する方法をお伝えしてきました。
とはいえ、柔軟性と筋力は効果が現れるまで時間がかかるので、継続しづらい、その間も腰痛に悩まされ続けるという問題点があります。
そこで、本記事でここまで紹介した方法以外にも、腰痛対策として考えられるものを列挙していきます。
ポジションの変更
プロのレーサーたちのようにサドルを高くして、ハンドルを低くし、風の抵抗を減らすためのポジション。
その姿勢に憧れを持つことには、強く共感いたします。
しかし、プロレーサーは前傾姿勢を安定して取るための柔軟性と筋力を鍛えています。
身体機能が大きく異る者同士で、同じ姿勢を取ろうとすれば、体には大きな負担となってしまうのです。
なので、週末ライダーに合ったポジションから、徐々にプロのような姿勢を取れるようにしていきましょう。
ハンドルを高くする
ハンドルが低ければ前傾が大きくなり、腰の曲がる角度が大きくなります。
少し高くして負担を減らしましょう。
サドルの調整
- 高さ
-
少し低くすると体幹の前傾が緩和されます。
- 前後
-
前すぎるとハンドルまでの距離が近く、窮屈になって、体を折りたたむような姿勢を強いられます。
これも腰が大きく曲がる原因です。
逆に後ろ過ぎても、手を頑張って前方のハンドルまで、伸ばさなければいけません。
体を支えてくれる手とお尻。その2点が遠くなると体幹を支えるために、腰の筋肉を働かせることになるので注意です。
ペダリング中の意識を変える
足先でペダルを踏むように意識していると、膝から下の筋肉が強く働きます。
これでは股関節を動かす筋肉である大殿筋、ハムストリングスが働きません。
代わりに腰の筋肉が働いてしまうので、太ももを回しているように意識して見ください。
まとめ
長時間のサイクリングで、腰痛を引き起こしてしまう原因について、理学療法士の知見から述べてきました。
本記事では、体のセルフケアについてのボリュームが多めになっています。
根本的に腰痛を断ち切るために、体の機能を向上させることは、必要であると考えます。
一方で、効果が実感できるようになるまで、時間がかかるのが難点。
まずはポジションの変更、ペダリングの際の意識付けで対処。
同時にトレーニングとストレッチも行って、長くサイクリングが続けられる体作りをしていきましょう!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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