ロードバイクに乗る人なら、誰しもが苦しむ上り坂。
平地でどれだけ軽く、進みやすいとはいえ、上り坂の洗礼を受ける初心者の方も多いと思います。
坂道を登るとすぐに足が攣ってしまう
先輩サイクリストのように、スイスイと坂を登りたい!
ヒルクライムが速い人は、何を意識して走っているの?
こんな悩みを解決します。
- 本記事の内容
本記事では坂を登るときのコツとして、以下の4つについて、理学療法士の目線で解説していきます。
- 息は吐くのが大事
- ペース配分の仕方
- ヒルクライムに合ったポジション
- 激坂ではダンシング(立ちこぎ)をする
- 本記事の信頼性
この記事を書いている僕は、体の使い方の専門家である、理学療法士です。
ロードバイク歴は6年で、ヒルクライムが好きで、よく挑戦しています。
今回は、ヒルクライム中に意識すると、少し楽に登れるようになるコツを解説します。
正直、ヒルクライムってキツいだけで、最初は何が楽しいのか分からないですよね。
僕も最初は「平地よりヒルクライムのほうが好きです!」という人を見て、どんな変態なんだと思っていました。(笑)
しかし、ヒルクライムを繰り返して、速く登れるようになるうちに、様々な魅力に取り込まれたのです。
ヒルクライムの魅力
- 爽快な下り坂
- 頂上からの絶景
- ベストタイムの更新
本記事では、上り坂で僕が実際に意識していることをご紹介していきます。
これからヒルクライムに挑戦して、速くなりたいと思っている人の役立つ内容です。
それぞれのコツとそのメカニズムについても解説していくので、より深く理解できるように解説していきます。
それでは、早速始めていきましょう。
①息を吐くことを意識する

疲れてくると、最初に起こる体の変化として、呼吸が荒くなってゼエゼエと肩で息をするようになります。
筋肉を動かすには、酸素が消費されます。
息が荒くなるのは、酸素をたくさん取り入れて、動き続けるための反応です。
呼吸回数<1回の換気の量
疲れて呼吸が荒くなってきた時は、息を吸い込む回数よりも、1回でたくさんの息を吐きましょう。
息を吐くのが大切であることを説明するためには、「死腔」というワードを知っておくと理解しやすいです。
- 死腔
-
呼吸おける、ムダ遣いの部分のことで、肺まで届かずに気道で止まった空気を指します。
酸素は肺にまで届いて、はじめて体内へ運ばれます。
気道で止まった空気は次に息を吐くとき出ていくので、ムダに吸ってしまったと言えるのです。
一般的な成人男性の気道~肺に入る空気の量は150ml。
要するに、1回あたりの呼吸には一定のムダ遣いができてしまうので、その量を減らすことが大切。
そして、呼吸をする回数が増えると、無駄になる空気の量も比例して増えてしまいます。
このような理由から、1回の呼吸の効率を上げるためには、呼吸回数よりも1回の換気量を増やすことが重要です。
空気をしっかりと吐き出すことが大切である理由は、ご理解いただけたかと思います。
では次に、換気の効率以外にも「息を吐き出す意識」が大切である理由についても触れていきましょう。
「吐く」を意識すると使う筋肉が変わる

息を意図的に吐こうとすると、腹筋に力が入ります。
「キレイなペダリングには体幹筋が重要」なんてことを聞いたことはありませんか?
腹筋に力が入れば、体幹が安定して脚がスムーズに回るようになります。
反対に、息を必死に吸っているときは、首周りの筋肉に力が必要です。
首周りに力を入れても、ペダリングには何も影響せず、むしろムダなエネルギーを消費します。
首周りの筋肉を使わないために、肩や腕で力まないことも大切。
疲れてきて、必死にハンドルを握ってしまうと、無意識のうちに首周りの筋肉が働きます。
まとめると、疲れて息が上がってきたときに意識すべきは以下の2つ。
- ハンドルを優しく握って、腕の力を抜く
- 息を吸うより、長めに吐く
そして、腹筋を使って体幹を安定させるために必要な姿勢もありますので、そちらについては後述いたします。
②一気に疲れないためのペース配分

最後まで登り切れず、足をつく。
後半ヘロヘロで、なんとか頂上までゴールするだけ。
ヒルクライムを始めたときは、僕もそんな感じでした。
もちろん体力的に、まだ余裕を持って上りきれないだけということもあります。
一方で、以下のようなペース配分に関する原因も考えられます。
①序盤に気合を入れて飛ばしすぎる
②勾配の変化にペースを乱されている
ここからは、ヒルクライムでペースが一定に保てないシーンを取り上げ、対策をお伝えします。
ヘアピンカーブのコース取り
険しい林道を登っていると現れる、絶望のヘアピンカーブ。
急勾配になりやすく、脚と気持ちを大きく削られるサイクリストが跡を絶ちません。(僕もそのひとり)
ヘアピンカーブで体力を温存して乗り切るには、なるべく外側を走ることです。
外側は勾配が緩やかで、パワーを上げる必要がありません。
ヘアピンカーブの内側は急勾配で、ペースを一気に落とされて、体力もかなり消耗するでしょう。
その一方で、最短距離で走れるメリットがあるのも事実。
何度か登っている坂で、ベストタイムを狙うときには、なるべく内側を攻めるのも手です。
登っているときの疲れ具合や、狙っているタイムで、どれだけ内側を攻めるかは変わってきます。
まずは最初は外側を走るようにして、体力が向上してきたと実感できたり、その時の調子にしたがって、中央に寄っていきましょう。
ケイデンスを落としすぎない

一定のペースを保つと言っても、意識するのはスピードではありません。
意識するべきなのは、ケイデンスです。
ケイデンスセンサーが付いてればベストですが、なくてもペダルがさっきより重い、回すのが遅くなってると感じたら、それがサインです。
重く感じたらギアを軽くして、なるべく重いと感じずにペダルを回してください。
- ギアが重いとき
-
重いギアを使うと、脚の数ある筋肉の中でも、速筋線維を使う割合が増えます。
速筋線維は強いパワーを発揮できる代わり、スタミナは弱い傾向があります。
- ギアが軽いとき
-
一方、軽いギアで負荷をあまり感じることなく、ペダルを回せている時は、遅筋線維が働いています。
遅筋線維は先程と逆で、パワーは弱い代わり、スタミナが強いのです。
速筋線維は数分間使い続けるには、スタミナが持ちません。
遅筋線維を使うために、軽めのギアを選んでください。
あくまで目安ですが、上りでもケイデンスは70bpm以上が維持できるといいでしょう。
ケイデンスセンサーは優先的に取り入れてほしい装備です!
勾配が変わる手前で変速
先程ケイデンスを落とさず、一定に保つことが大切である理由を解説しました。
では、そのためにできることはあるのでしょうか?
それは、勾配が変わる前に、変速をしておくことです。
センサーの数値が下がったり、脚が重たくなったと感じたりしてからでは、はっきり言って変速が遅いです。
勾配が上がりそうならギアを軽くして、勾配が下がりそうならギアを重くしておく。
このようにして、大きくケイデンスが変わらないようにすれば、体力が一気に削れられなくなります。
勾配の変化を事前に把握するためには、顔を前に向けて走らないといけませんよね?
そのために必要な姿勢のとり方について、以下で解説します。
③ヒルクライムに合ったポジションを取る

平地と違って上り坂では、体の傾きが変わり、常に負荷がかかった状態です。
もちろん、平地と同じようにはペダリングできなくなります。
登りに合ったポジションを取らず、必死にパワーを上げて乗り切ろうとしても、スタミナ切れするのは目に見えていますよね。
あくまで、効率よくペダリングをするために、意識すべきことをお伝えします。
目線は前にしておく
登りで疲れがピークになると、目線は下がりやすくなります。
必死に残りの体力を絞り出そうとすると、そうなってしまうのは僕も経験があります。
上述したように、目線が下がると前方が確認できず、勾配の変化に気づくのが遅れて、ケイデンスが乱されて体力を削られます。
また、下向きでは気道が狭くなって、呼吸がスムーズにできなくなるのもデメリットです。
このようなデメリットを回避するために、手元に目線が落ちないように、5~6mほど前方を見ておきましょう。
体を前傾しすぎない
目線が下がるのにつられ、体全体も前傾しやすいものです。
そうなると、腹筋が潰されてうまく力が入りづらくなります。
結果、ペダリングが安定しません。
また、腹筋に力が入らないと、息も吐きづらくなるので、呼吸もスムーズにできなくなります。
前方を見ることもできるようになるので、体は起こしておきましょう。
ハンドルを強く握らない
苦しくなってくると、ハンドルを強く握ってしまうのも、やってしまいがちです。
前述の通り、強くハンドルを握っている時は、首周りの筋肉を強く使っている状態。
ムダなエネルギーを使って疲労を強めてしまうので、優しくハンドルを持つようにしましょう。
急な上りではサドルの前方へ移動
勾配がきつい上り坂では、少しサドルの前方にお尻を移動させましょう。
ペダルから体の重心が、離れすぎないようにするためです。
(矢状面のペダリング図)
キツい上り坂では、平地と比べて体が後方に倒されます。
横から見たときに、後ろに体が行き過ぎていないことを意識して、勾配に合わせてお尻の位置を前後に変えてみてください。
また、急勾配で体が後方へ倒れていると、前に進む力が弱くなります。
「体を前傾しすぎるのは良くない」とは言いましたが、急な勾配ではやや前傾になる意識も必要です。
体の傾きの具合は、バランスが大切!
④激坂ではダンシングを使う

ヒルクライムをしていれば、斜度が10%を超える激坂も珍しくありません。
もうシッティングでは進むのが難しいと感じたら、すべてのサイクリストに与えられた必殺技『ダンシング』を使いましょう。
シッティングとは使う筋肉も変わるので、疲弊しきった筋肉を一時的に、休ませることも可能です。
ダンシングで意識すべきことは、以下の4つ。
- ギアを1,2個上げる
- ハンドルを引っ張らない
- 腰は高い位置をキープする
- バイクを左右にふるようにする
ダンシングのコツの話は、かなりのボリュームになってしまいます。
なので、今後ダンシングについての記事を公開する予定ですので、そちらをご参照ください。
まとめ
ヒルクライムを少しでも楽にするために、意識すべきことを述べてきました。
まとめると、内容は以下のようになります。
- 息を吐くことを意識する
- ゆっくりめのペースで登る
- 登り用のポジションを取る
- 激坂ではダンシングを使う
1から順番に、実践しやすいポイントになっています。
ポジションの取り方や、ペダリングはスキルです。
理論を意識することも大切ですが、何より繰り返しの練習で、どんどん上達します。
数をこなして、スキルと心肺機能の両方を向上させてください!
本記事で紹介したコツが、ヒルクライムが苦手だけど、速くなりたい人の役に立てれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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